商標登録の基礎知識
商標登録の無効審判
無効審判とは?
商標登録の無効審判は、本来、商標登録されるべきでない商標が商標登録されているような場合に、特許庁へ審判を請求することにより、商標登録を無効にすることができる制度です。
無効審判は、指定商品・指定役務ごとに行うことができます。
ですから、複数の指定商品・指定役務について商標登録されている場合に、一部の指定商品・指定役務についての商標権のみを無効にすることもできます。
無効審判を請求できる人は?
無効審判を請求することができるのは、利害関係人のみとされています。
特許庁の審判便覧によれば、利害関係人としては、以下の例があげられています。
- 登録商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品・役務に使用している者/使用していた者
- 登録商標と同一又は類似の商標を、将来使用する可能性を有する者
(登録商標と同一又は類似の商標の使用を準備している者)
- 登録商標により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者
- 商標権の専用使用権者、通常使用権者等
- 商標権について訴訟関係にある者/あった者、又は、警告を受けた者
もちろん、これらは例ですので、これら以外にも、利害関係人として認められるケースはあるかと思います。
無効審判の理由
無効審判の理由としては、例えば、
商標法第3条
- 自己の業務にかかる商品・役務に使用する商標について商標登録を受けることができる(1項柱書き)。
- 識別力を有しない商標は商標登録を受けることができない(1項1号~6号)。
商標法第4条第1項第1号~19号
以下の商標については、商標登録を受けることができない。
- 他人の肖像、他人の氏名・名称、著名な雅号・芸名・筆名を含む商標で、その他人の承諾を得ていないもの(8号)。
- 他人の周知商標又はこれに類似する商標で、その周知商標の商品・役務と同一又は類似する商品・役務について使用するもの(10号)。
- 他人の登録商標又はこれに類似する商標で、その登録商標の指定商品・指定役務と同一又は類似する商品・役務について使用するもの(11号)。
- 他人の業務についての商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(15号)。
商標法第8条第1項・2項・5項
- 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について、異なった日に2つ以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる(1項)。
- 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について、同日に2つ以上の商標登録出願があつたときは、協議により定めた一方の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる(2項)。
の規定に違反して商標登録されたこと等があげられます。
ここであげたものは、無効理由の一部です。これ以外にも、無効理由はあります。
無効審判を請求することができる期間
商標登録の無効審判は、商標権の消滅後においても請求することができます。
例えば、商標登録から10年が経過した際に、商標登録の更新手続きを行わなかった場合、商標登録の日から10年の時点で商標権が消滅します。
この場合、商標登録の日から10年間は商標権が有効だったということになります。
例えば、商標権侵害をした場合の損害賠償請求の時効は20年ですので、現時点では商標権が消滅していても、商標権が有効であった期間について、無効審判により商標権を消滅させるメリットがあります。
ただし、商標権が登録されてから5年間を経過した後は、商標法第3条、第4条第1項第8号・第11~14号、第8条1項・2項・5項等の規定に違反していることを理由として、無効審判を請求することはできません。
この5年の期間を除斥期間といいます。
無効審判の審理・審決
無効審判についての審理、決定は、三人又は五人の審判官の合議体が行います。
無効審判が請求されると、商標権者は答弁書を提出する機会を与えられます。
無効審判は、原則、口頭審理により行われますが、書面審理により行われることもあります。
書面審理の場合は、審判を請求した人は、答弁書の内容をふまえたうえで、弁駁書(べんばくしょ)の提出をすることができます。
審理の結果、商標登録を無効にすべきとの審決がだされた場合は、無効審決の謄本の送達の日から30日以内であれば、東京高等裁判所へ訴えを提起することができます。
30日以内に訴えが提起されない場合は、無効にすべき旨の審決が確定します。
審決が確定したときは、その商標権は、一部の場合を除き、初めから存在しなかったものとみなされます。
また、審判の請求は成り立たない旨の審決がだされた場合でも、審決の謄本の送達の日から30日以内であれば、東京高等裁判所へ訴えを提起することができます。
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